朝日新聞 1月13日 政治断簡 編集委員・根本清樹
~選挙制度改革 保岡委員長の揺るがぬ信念~

 なるほど、と思わせる人選だった。衆院政治倫理確立・公職選挙法改正特別委員会(倫選特)の委員長に、自民党の保岡興治氏(73)がなった。当選12回のベテラン。鹿児島1区選出。前回2009年の衆院選で落選し、昨年暮れ、国政に復帰した。

 なぜ、なるほどなのかといえば、倫選特が取りあつかう事柄のいきさつ、次第といったものを最もよく知る人のひとりだからである。

 倫選特は今月末からの通常国会で大きな仕事をしなければならない。最高裁に違憲状態とされた一票の格差のさらなる是正、「身を切る」改革としての議員定数削減、そして選挙制度の「抜本改革」。

 さまざまな次元の論点がからまりあって、ややこしい。とりわけ抜本改革の議論は、かつての中選挙区制をいまの小選挙区比例代表並立制にかえた「政治改革」そのものの再検討にほかならない。 

その政治改革に、保岡氏は長く、深く携わってきた。自身にとって「宿命的な課題」だったからである。

 旧奄美群島区(定数1)。中選挙区制の時代に全国で一つだけあった「小選挙区」で、保岡氏は過酷な選挙を戦った。氏の過去の国会発言から引けば、それは「食うか食われるかの死闘」であり、「金権選挙や腐敗選挙の代名詞」とされた。氏は「我が身を汚」し、「地獄を見た」。

 保守同士が骨肉相食(は)む利益誘導型、地盤培養型の選挙を、政党本位、政策本位の選挙に変えなければならない。異常な選挙を知ればこその政治改革へのかかわりだった。
いま中選挙区制に戻せという声が、自民党内からも含め強まるかにみえる。圧勝か、惨敗か。過去3回の衆院選を見れば、結果が極端すぎるという議論はありうる。

 この点、保岡氏は行司役としての立場を踏まえ、慎重なもの言いに徹する。「委員長として特定の方向を頭に置いて主導することは慎みたい」

 ただ、小選挙区制導入の意義についての信念は揺らいでいない。結果が極端だといっても、それは当初からある程度は想定されていた。

  「各政党が大きな国家戦略をそれぞれ描き、競いあう。国民の支持を得た方が、得票率を超える議席数を与えられ、そのぶん大きなエネルギーをいただいて、困難な改革に挑む。しかし、信頼を失えばあっという間に転落する。その緊張感が各党を必死にさせ、政治の体質を強くする」

 3回の衆院選は、そのメカニズムの学びの過程だったというのが氏の見立てである。

 通常国会といっても、正味の時間はそれほどない。抜本改革で合意できるかどうか、はなはだおぼつかない。

 ならば司法の判断に応え、格差是正にけりをつける作業を優先すべし。裁判官出身で法相経験2回の保岡氏に、もってこいの仕事ではないか。

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