●政策のページ
議員立法 憲法問題 企業法制 定期借家権 司法改革 教育改革 金融&土地債券流動化
不動産の流動性で日本経済に活力を - 日本版REIT検討、最終報告
1999年12月1日(No.66)

日本版REIT検討、最終報告

CONTENTS
1.日本版REIT検討部会最終報告の要旨
2.日本版REIT検討部会最終報告
3.21世紀を展望した金融サービスのあり方とルールの枠組みについて

自由民主党司法制度調査会長
金融再生トータルプラン推進特別調査会長
衆議院議員
保岡 興治

1.「日本版REIT検討部会」最終報告書の要旨
1999年11月19日

1.「日本版REIT」創設に向けて

「証券投資信託及び証券投資法人に関する法律」の改正により日本版REITを実現することが適切である。具体的には「主として有価証券」を対象とした現行制度を抜本的に改正し、実物不動産を運用対象として認める。
これにより不動産マーケットには新たな資金が流入し、不動産の流動性が高まると同時に透明性が高まることが期待される。個人投資家や機関投資家にとって、運用商品の選択肢が広がり、小口の資金で不動産投資することが可能となる。また、単独物件を購入するのに比べ対象商品や対象地域などのリスク分散ができるなどのメリットもある。

(1)運用会社:不動産事業の特殊性に鑑み、不動産投資顧問会社など不動産に精通した会社が運用会社になることを可能とする。
(2)忠実義務:当事者間が利益相反関係に立つ可能性があるものの、必ずしも忠実義務に反するとは言えない行為については緩和する。
(3)資産保管会社 不動産の場合は保管資産の概念として権利書などを想定し信託銀行等で保管することとするほか、資産管理口座や家賃徴収口座を信託銀行等に設置する。
(4)借入金:借入を解禁する。
(5)現物出資:不動産の場合は現物出資を可能とする。
(6)配当可能所得算定:クローズド・エンド型の場合は不動産の評価は簿価で行う。
(7)登録免許税、不動産取得税、特別土地保有税: SPCと同様に扱う。
(8)圧縮記帳:新投資法人に不動産を現物出資した場合に、取得した投資口を売却するまでは特定現物出資に係る圧縮記帳の特例を認める。

2.SPC法の改正

 新投資法人が投資するのは実物不動産だけでなく、SPCが発行する優先出資証券も投資対象となる。SPCは資産流動化型スキームの要であり、資産運用型スキームとSPCを組み合わせることにより、自由度の高い商品設計が可能となる。新投資法人による投資スキームをより実効あるものとするために、SPC法に関しても以下のような改正が必要である。

(1)売却代金等の分配をその都度行えるような優先出資の減資手続きを創設する。
(2)優先出資の増資要件を緩和する。また時価発行を承認する。
(3) SPCの借入制限を大幅に緩和する。
(4)登録申請時の資産流動化計画の簡素化や処理期間の短縮を行う。
(5)資産流動化計画の変更の制限を緩和する。
(6)現物出資による優先出資の引受けを認め、圧縮記帳の特例を適用する。
(7)特定社債の公募、プロ私募、優先出資証券50人以上の引受けという損金算入要件を廃止、ないしはSPC法の趣旨に反しない限り柔軟な適用を可能とする。
(8)優先出資証券の議決権に関して、定款上で議決権の付与につき制約を設ける等の対応ができるようにする。
(9)資産流動化計画の計画期間に関して、指名金銭債権及び信託受益権についても、他の特定資産と同様に50年とする。
(10)SPCが不動産を取得する場合の登録免許税・不動産取得税は非課税、ないしは大幅な軽減税率を適用する。


2.日本版REIT検討部会最終報告書
平成11年11月
不動産・金融環境改革懇談会
日本版REIT検討部会

1.不動産・金融環境改革懇談会名簿
  (敬称略、順不同)

代表幹事 田中 健介 ケン・コーポレーション代表取締役社長
座長・筆頭幹事 井出 保夫    井出不動産金融研究所
幹事 加藤 久子 太田昭和アーンスト・アンド・ヤング 代表取締役
幹事 田村 幸太郎       牛島法律事務所 弁護士
幹事 林 正道        日興證券投資運用部部長
幹事 古川 尚志 モルガン・スタンレー・リアルティー エグゼクティブディレクター
幹事 石坂 哲将 日興アセットマネジメント商品企画部 課長
委員 賣間 正人  セキュアード・キャピタル・ジャパン 代表取締役社長
   佐藤 繁   ケン・コーポレーション 常務取締役
   高田 秀之
東急不動産経営企画部企画グループ グループリーダー
   松河 教夫          森ビル総務部 部長
   松本 哲男
オリックス・リアルエステート 取締役営業本部長
   山口 達夫     伊東山口合同事務所 司法書士
   吉田 奉行 
GEキャピタル・リアルエステート マネージングディレクター    米津 宏     リクルートコスモス 常務取締役
   渡会 一郎      三菱地所社長室企画部 副長
オブザーバー
   上野 義治   上野司法書士合同事務所 司法書士
   北山 慶
ムーディーズ・ジャパン アシスタンスバイスプレジデント
   小松 良則     小松司法書士事務所 司法書士
   佐藤 光男
オリックス・リアルエステート
不動産事業第二部第一課長
   芝 将宏        司法書士事務所 司法書士
事務局 網野 康彦
ケン・コーポレーション国際不動産部部長
    室田 一治
ケン・コーポレーション営業推進部部長
    伊東 尚憲    ケン不動産投資顧問主任研究員

2.日本版REIT検討部会名簿
  (敬称略、順不同)

委員 井出 保夫         井出不動産金融研究所
   加藤 久子
太田昭和アーンスト・アンド・ヤング代表取締役
   田村 幸太郎        牛島法律事務所弁護士
   林 正道        日興證券投資運用部部長
   石坂 哲将
日興アセットマネジメント商品企画部課長

オブザーバー
   古川 尚志
モルガン・スタンレー・リアルティー エグゼクティブディレクター

事務局 網野 康彦
ケン・コーポレーション国際不動産部部長
    室田 一治
ケン・コーポレーション営業推進部部長
    伊東 尚憲 ケン不動産投資顧問主任研究員


3.日本版REITの必要性について

 90年代の日本経済における諸問題は、バブル期の地価高騰、そしてその後の地価下落継続によるところが大きかった。不動産の流動性・透明性を高め、不動産マーケットに活力を取り戻すことは、21世紀に向けて日本経済の競争力を回復させるためのカギと言えよう。
 不動産市場と金融市場を結び付ける「日本版REIT」を創設することは、活力を取り戻す起爆剤となる。不動産マーケットには新たな資金が流入し、不動産の流動性が高まると同時に透明性が高まることが期待される。個人投資家や機関投資家にとって、運用商品の選択肢が広がり、小口の資金で不動産投資することが可能となる。また、単独物件を購入するのに比べ対象商品や対象地域などのリスク分散ができるなどのメリットもある。
実際、米国においてもREITにより民間資金を直接的に不動産市場に呼び込み、不動産市場を活性化させることに成功し、90年代前半の景気回復に大きく寄与している。


4.SPC法や不動産特定共同事業法との相違点について

 昨年9月にはSPC法が創設され、現在その見直し作業が行われているところであり、「資産流動化型」の仕組みは充実してきている。不動産特定共同事業についても、「資産運用型」の仕組みを目指して資産の入れ換えが可能となる改正が行われたところである。ただSPCや不動産特定共同事業は、あくまでも当初計画の枠組の中で運営されるものであったり、株式公開による流動性の確保及びそれに至るまでの投資家保護の仕組みの不足等に課題が残る。ファンド自体が成長し、より多くの資金を集めることによりリスクの分散を図ることのできるような本格的な投資スキームには至っていない。米国のREITのように、レバレッジ効果、資産の入替え・追加、株式上場益の確保、高い流動性など、不動産投資と株式投資の両方の醍醐味が得られるような商品を目指すことが必要である。

「資産運用型」:金融審議会の定義では、多数の投資家から集めた資金をプールし、これを専門家たるファンドマネージャー等が各種の資産に投資・運用することによって得られたキャッシュフローを投資家に配分するものであり、既存のものとしては証券投資信託、商品ファンド、実績配当型合同運用金銭信託等がこれに当たる。
「資産流動化型」:同様に、特定の資産から生じるキャッシュフローを、専門家たるアレンジャー等が組み換えて主として多数の投資家に証券等を販売することにより資金調達を行う仕組であり、既存のものとしては、SPC法や特定債権法による証券化商品等がこれにあたる。

5.米国のREITについて

 米国のREITは、主に公募により多数の投資家から集めた資金をプールし、会社または信託形態で不動産投資を行い、運用利益を投資家の持ち分に応じて分配する仕組み。会社形態であっても税法上の一定要件などを満たせば当該法人には課税されないというものである。
 1960年の内国歳入法第856〜859条改正によって初めてREITが導入された。導入の目的は、大規模な不動産投資に対する小口の一般投資家、個人投資家の参入機会を拡大することであったが、当初はREITの数も少なく、市場規模は2億ドル程度からのスタートとなった。
 その後も、右肩上がりで順調に市場が拡大したわけではなく、ブームとその後の冷却期間を繰り返しながら、徐々に市場を拡大してきた。1980年代までは特定の不動産を対象とした資金調達のためにREITが用いられてきたが、1990年前後数年にわたる不動産不況を転機として、不動産の所有・運営会社がコーポレート・ファイナンスの道具としてREITを用い始めたことで、1990年代にREITの市場規模が飛躍的に拡大した。この背景にはREITとオペレーティング・パートナーシップを組み合わせ二重構造とするUPREIT方式が1992年に考案され、資産をREITに拠出する際の課税繰り延べが可能になったことがある。非公開の不動産会社がUPREITに形態変更した上で株式公開するのが当初の流れであったが、さらに上場したREITが増資を原資として新たな不動産を買収していくトレンドが生まれた。この過程の中で、不動産市場の市況好転とREIT市場への資金流入が相乗効果を生みながら進行し、1999年9月末時点ではREITの時価総額は1310億ドルとなっている。
図表1 米国REITの時価総額推移

6.「日本版REIT」創設に向けて

 資産運用型の代表的商品スキームである証券投資信託を活用し、不動産を運用対象(100%不動産でも可能)とすることが、理想とする「日本版REIT」の姿に最も近いと考えられることから、「証券投資信託及び証券投資法人に関する法律」(以下投資信託法)の改正によって実現されることが適切である。

 主な改正の前提は以下の通り
・運用の対象は「主として有価証券」を撤廃し、金融資産以外の、例えば実物不動産も運用の対象にできるようにする。
・運用会社については、対象会社の範囲を拡大する。

(1)運用会社について
[現行制度]証券投資法人は、運用会社にその資産の運用に係る業務の委託をしなければならない(198条)。運用会社は、証券投資信託委託業者、有価証券に係る投資顧問業法の認可を受けた投資顧問業者、資産運用に係る業務の委託先として適当なものとして総理府令・大蔵省令で定める法人、でなければならない(199条)
[改正案]不動産事業の特殊性に鑑み、不動産投資顧問会社など、不動産に精通した会社が運用会社になることを可能とし、現行運用会社に追加する。
[意義と必要性]個別性、唯一性など不動産の特徴や、情報インフラ整備の遅れを勘案すると、不動産の投資判断にはより高い専門性が必要とされる。こうした専門性を有する不動産会社を運用会社の選択肢のひとつとして想定することは、顧客資産の効率的運用には欠かせない。
[事業者要件]なお、投資顧問会社の運用会社としての水準を投資家に明示できるような事業者要件を設ける。

(2)忠実義務に関して
[現行制度]証券投資信託委託業者に関係する忠実義務の主たるルールとして、自己とファンド間の取引の禁止、スキャルピングの禁止、ファンド間の利益の付替え、適正取引条件、利害関係人が関係する取引におけるルールなどが定められている
[改正案]利回り保証、損失補填、ファンド間の利益の付替え等、明らかに公平を逸し、または意図的に投資家の投資パフォーマンスを損ねる行為等については禁止するが、当事者間が利益相反関係に立つ可能性があるものの、必ずしも忠実義務に反するとは言えない行為については緩和する
[意義と必要性]通常の有価証券のように大量に流通しているものとは異なり、不動産は特定性が強く、利害関係人との自己取引が投資家にとって有益な場合もありうる。また米国をはじめとする他国においては、運用会社あるいは資産の管理会社が投資家と同じ立場で投資に参画し、投資のリスクを共有する形態が頻繁に利用されている。これは、運用会社ないしは資産の管理会社に投資家と共通の利害関係を持たせることで投資家の最大利益の確保を図るものであり、こうした形態をとるスキームを制度上の理由により制約することは避ける必要がある。
[投資家保護等の要件確保]積極的な情報開示と、ガバナンス機能を活用する。

(3)資産保管会社について
[現行制度]登録証券投資法人は、資産保管会社にその資産の保管に係る業務を委託しなければならない(208条・)。資産保管会社は、信託会社又は信託業務を営む銀行、証券会社、資産の保管に係る業務の委託先として適当なものとして総理府令・大蔵省令で定める法人、でなければならない(208条・)。
[改正案]不動産の場合は、保管資産の概念として権利書などを想定し信託銀行等で保管することとする。登記は新投資法人で行う.
[意義と必要性]有価証券の場合、第三者対抗要件は占有であり、信託銀行や証券会社による保護預かりが適している。これに対して不動産は登記が第三者対抗要件となるため問題はない。
[投資家保護等の要件確保]権利書を信託銀行等に保管するほか、資産管理口座や家賃徴収口座を信託銀行等に設置する等の方法が考えられる。

(4)借入金に関して
[現行制度]解約代金立替以外の資金借入が認められていない(投資信託協会の自主ルール)
[改正案]借入を解禁する
[意義と必要性]不動産の場合、一物件を購入するための金額が大きくなるため。また、商品設計の自由度が高まると同時に、保有資産の価値の維持や増加に借入を利用することできれば、機動的かつ効率的運用が可能となる。
[投資家保護等の要件確保]借入の目的や効果など、情報開示やガバナンス等を明確にすることで対応する。米国のクローズド・エンド型の会社型では、複数の証券(優先株や社債等の上位証券)の発行や借入ができる。

(5)現物出資を可能にする
[現行制度]現物出資は認められていない(71条)
[改正案]不動産の場合は現物出資を可能とする。
[意義と必要性]現物出資と後述の圧縮記帳を認めることにより、資産の移転を促進する。現保有者へのインセンティブとなり、優良不動産もマーケットに出てくる可能性が高い。結果的に商品バリエーションが増し、投資家の選択肢が拡大する。また不動産流動化にもつながる。
[投資家保護等の要件確保]現物出資時点での取得価格の透明性・公明性などを収益還元価格の算定や外部鑑定等により確保する。

(6)配当可能所得算定は簿価で行う
[現行制度]配当可能所得の算定における棚卸資産および有価証券の評価にあたって、オープン・エンド型の証券投資法人は時価を、その他の証券投資法人は簿価を用いる(租税特別措置法8の2条5項)
[運用案]対象が不動産の場合も同様に運用し、クローズド・エンド型の場合は不動産の評価は簿価で行う。
[意義と必要性]時価評価により未実現のキャピタルゲインを配当することは、不動産の場合、保有物件売却の必要があり困難である。

(7)関連税制の改正
[登録免許税、不動産取得税、特別土地保有税の取扱] SPC法に基づくSPCについては、登録免許税や不動産取得税が1/2に軽減され、特別土地保有税は非課税となっている。新投資法人においてもSPCと同様に、不動産取得における登録免許税、不動産取得税を1/2とし、特別土地保有税は非課税とする措置が必要である。更に SPCの登録免許税、不動産取得税については各方面から非課税化の要望が出されている。非課税の措置が採られるなら、新投資法人も同様に非課税とする。
[圧縮記帳に関して] 新投資法人に不動産を現物出資した場合に、取得した投資口を売却するまでは特定現物出資に係る圧縮記帳の特例を認める。

7.SPC法の改正に関して

 新投資法人が投資するのは実物不動産だけでなく、資産流動化計画に基づいたSPCの発行する優先出資証券も投資対象となる。SPCは資産流動化型スキームの要であり、資産運用型スキームとSPCを組み合わせることにより、自由度の高い商品設計が可能となる。新投資法人による投資スキームをより実効あるものとするため、SPC法に関しても以下のような改正が必要である。

(1)優先出資の減資
[現状]優先出資の減資は、資産流動化計画の最終処理段階等以外は原則禁止されている(48条、119条)。
[対応]複数の不動産を保有するSPCがその一つを譲渡した際の売却代金や減価償却費相当分の現金について、その都度優先出資者へ分配が可能となるような減資手続きの創設を行う。

(2)優先出資の増資および時価発行
[現状]優先出資の増資は資産流動化計画、資産流動化実施計画において事前に予定しておく必要がある(150条、37条2項)。
[対応]不測の支出に備えるための増資要件を緩和する。また、時価発行を承認する

(3)借入制限の緩和
[現状]予め資産流動化計画に記載された使途が、つなぎ資金や修繕等の資金であれば借入可能(151条、5条1項5号)
[対応]SPCの借入制限を大幅に緩和する

(4)資産流動化計画の簡素化
[対応]登録の申請時に提出する資産流動化計画を簡素化する。また処理期間(現行2ヶ月)を短縮する(5条、施行規則9条〜15条、40条)

(5)資産流動化計画の変更
[対応]資産の弾力的な処分・追加取得を可能とするために資産流動化計画の変更の制限を緩和する

(6)現物出資と圧縮記帳
[対応]現物出資による優先出資の引受けを認め、特定現物出資に係る圧縮記帳の特例の例外措置を講じる(38条6項、法人税法51条)
[現状]SPCにおける損金算入の要件として、特定社債の公募あるいはプロ私募、または優先出資証券の50人以上による引受けの規定があるが、この規定により・国外発行市場を用いた起債、・リパッケージ債の発行、・証券発行までのつなぎ融資としての借入、等が制約を受け、SPC法が広く利用されない大きな要因のひとつになっている。
[対応]当該規定の廃止。ないしは、SPC法の趣旨に反しない限り柔軟な適用が可能となる規定に変更する

(8)優先出資証券の議決権に関して
[現状]優先出資社員に取締役の任免にかかわる議決権が付与されているため、優先出資証券を第三者に販売することが、SPCの倒産隔離の阻害要因となり、特定社債の格付け取得上大きな制約となっている。
[対応]コーポレートガバナンスによる投資家保護の観点とあわせ、定款上で議決権の付与につき制約を設ける等、の対応ができるようにする。

(9)資産流動化計画の計画期間に関して
[現状]指名金銭債権及び信託受益権については、資産流動化計画における計画期間及び関連して発行される特定社債の償還期間が最長20年となっている。このため、残存期間が長期の住宅ローン(例えば30年程度)を対象とした証券化を行う場合でも、償還期間が20年以下の特定社債しか発行できない不都合を生じている。
[対応]当該規定を他の特定資産と同様に50年とする。

(10)関連税制の軽減
[現状]SPC法に基づくSPCにおいては不動産買取時の登録免許税・不動産取得税が1/2に軽減されている。しかし信託を用いた流動化スキームの取引コストと比較すると、現状の軽減税率だけでは、SPC法利用のコスト負担が大きい。
[対応]SPCが不動産を取得する場合の登録免許税・不動産取得税は非課税、ないしは大幅な軽減税率を適用する。

8.その他の改正

 一般取引等における登録免許税の廃止と登記手数料制への移行
[現行制度]SPCにおける不動産買取時の登録免許税が1/2に軽減されているが個別的な特例措置である。
[改正案]個別的な登録免許税軽減ではなく、一般取引等においても登録免許税制の廃止と登記手数料制移行を行う。
[意義と必要性]不動産登記の受益の核心は対抗力の取得にあるとして、登録免許税は専らその取得した権利を第三者に対抗する登記の利益に課するものだとすれば、国民の負担する税は、登記行政を賄う限度あれば足りる。同じく権利保全制度である民事裁判においても裁判税ではなく、手数料制である。


9.日本版REITにより期待される市場規模

 (財)民間都市開発推進機構の「10年後の不動産の証券化商品市場規模(試案)」によれば、2008年における証券化商品発行総額は、概ね15〜20兆円と推定されている。米国REIT類似のエクイティ型市場規模については約8兆円(同試案における供給側予測の方法による)が見込まれている。


3.21世紀を展望した金融サービスのあり方とルールの枠組みについて
 金融審議会の検討状況と関係法案の提出

1.21世紀を展望した金融サービスのあり方
(1)経済のストック化や高齢化社会への移行に伴い、国民の金融資産の有利な運用、リスクを伴う新規産業への 円滑な資金供給等が求められている。
 また、通信技術の発展や経済のグローバル化により、金融取引のあり方も大きく変化。市場への信頼を確保するため、金融サービス利用者の保護のための環境整備も必要。
(2)しかしながら、現行法制では、各金融商品毎の縦割り規制となっており、業法の枠組みを越えた新しい商品・サービスの提供や、業態を越えた競争を阻害。また、業者に対する規制が中心で、利用者の司法上の救済も不十分。

2.新しい金融のルールの枠組み・金融審議会による検討
(1)現在金融審議会では、上記の問題点等を克服するため、 新しい金融のルールの枠組みについて、金融取引を幅広く対象とし、縦割り規制から機能別に転換するとともに、ルール違反には行政上の規制に止まらず、司法責任も追及される仕組み(いわゆる「日本版金融サービス法」)の整備を念頭に検討を進めており、来年6月までに最終報告をとりまとめる予定。
(参考)諸外国の状況
 ・イギリスでは、金融サービスを包括的に対象とした金融サービス法が存在
 ・アメリカでは、業態別の業法の枠組みがある一方で、証券法上の「証券」概念を幅広く解釈し適用することによって、縦割りの弊害を軽減
 (2)更に、金融審議会では、以下の点について、次期通常国会への法案提出に向けて、年内に中間取りまとめを行う予定。
  ・効率的な資産運用等のニーズに的確に対応するための集団投資スキーム(多数の者から資金を集め、専門家が幅広い資産に運用する仕組み)を整備する観点から、SPC法及び投信法を改正する。 (注)経済新生対策(11月11日)において不動産の証券化等の環境整備として取り上げられる。
  ・各業界法で十分手当されていないが、利用者保護に必要な、販売業者の説明義務とその民事上の効果等(販売・勧誘ルール)について、金融商品横断的な法律の制定を行う。