| 1999年10月1日(No.64)
CONTENTS
1.都市再構築を通じた日本経済再生へ(案)
2.元気あふれる経済再生策の実行を
自由民主党司法制度調査会長
金融再生トータルプラン推進特別調査会長
衆議院議員
保岡 興治
1.都市再構築を通じた日本経済再生へ(案)
・目的
・歴史、伝統、自然との調和といった日本の良さを活かした魅力的な都市(大都市圏・地方)の再構築を通じて内需振興を図り、あわせて日本経済の再生も実現する。
・その大前提として、21世紀に国民が望む都市とはどのようなものか確認をし、示す必要がある。
・政策手段
1.不良債権の処理促進
(1)効果:事業者・銀行の健全化、担保不動産の再生
(2)政策:・銀行への資本注入、早期健全化対策など
・競売制度見直し(短期賃貸借改正)
・特定調停制度、新再建型倒産法 創設
2.国による社会資本への重点投資
(1)効果:21世紀の国民生活・産業基盤整備、国際都市の形成
(2)政策:・ハブ空港、大都市圏幹線道路、鉄道貨物整備・首都機能移転計画
・情報インフラ整備
・環境(省エネ)・リサイクル関連投資
・新建設素材、技術開発
・防災、防犯対策
・PFIの活用など
3.不動産の流動化促進
(1)効果:国民の金融資産(1200兆円)の活用、都市開発の促進、新ビジネス創出、不動産投資の民主化
(2)政策:・税制見直し(軽減)
・投資スキーム要件の緩和
・不動産など資産の証券化市場の創出支援
4.不動産の利用価値の向上
(1)効果:土地資源の有効活用による空間倍増、多様なニーズに応える不動産の提供、不動産の収益性向上
(2)政策:・建築基準の適正化
・土地利用規制(用途規制)の適正化
・市街地再開発の促進(土地収用の活用)
・定期借家権の創設 など
5.地方分権の推進
(1)効果:縦割り行政・補助金行政の弊害除去、自治体ごとの身の丈にあった街づくり、街づくりプロセスへの国民参加
(2)政策:・都市計画権限の自治体への委譲
・国民参加プロセスの導入
・中立的立場から都市をデザインするNPOの活用
・人材(タウンマネジャーなど)の育成
・都市計画策定段階における国民参加プロセスの拡大
・国から地方への税源の移譲
・国によるモデルプロジェクトの推進(ゼロ規制地区)
以上
2.元気あふれる経済再生策の実行を
新たなる政策樹立システムで対応
「政治のリーダーシップ」を実現するには、国づくりの指針となるような政策体系や基本政策を政党自身が考え、さらに議員が自分たちでプランを作らねばなりません。法律案でいえば官僚に決して丸投げしないで、基本的な法律は内閣法から議員立法へと転換させ、議員立法を中心として法制化していく方向へと変えるべきです。
その試金石となったのは、九〇年代後半の日本経済を襲った平成不況をどう立て直すか、金融・経済政策においてです。私はさっそく、新しい政治システムでそれを実行に移しました。
まず96年には、議員立法で「民事執行法」の改正を実現しました。これは当時、住専をめぐる公的資金投入をめぐって国会で大問題となったときに、不正な勢力が不良債権処理の妨害で巨利を得ているとの話があり、そこでそうした妨害排除の制度などの改正点をまとめて、いち早く議員立法で改正したものです。官主導ならば、法制審議会を何度も開いて、とうてい迅速には対応はできなかった、と関係者から大変喜ばれました。
また、97年の通常国会では、同じく基本法である「商法」を議員立法で改正しました。この商法改正も、日本の企業を元気にさせるためにはなくてはならないものです。
商法改正のポイントは、自社株消却の規制緩和とストックオプション制度の導入のふたつにあります。前者は企業の過剰な資産のスリム化と株式市場を活性化する切り札とされたもので、今日の経済を支える仕組みの一つとなっています。また、後者のストックオプションは、リスクをおそれず事業に取り組む人達に魅力あるインセンティブを与えることで、21世紀をリードする活力ある事業を育てる重要な制度です。
同僚議員と協力しつつ、このような経験と実績を踏まえ、緊急の経済ニーズに応えることができるように、議員立法に取り組んでいます。
例えば、価値観や生活環境の大きな変化に伴う個人の様々なライフスタイルにあわせた豊かな賃貸住宅の供給を生む「定期借家権」の創設、不良債権処理に有効とされる「特定調停制度」の創設、監査機能の強化や株主代表訴訟の見直し等の「コーポレートガバナンス」に関する商法の改正は、次期国会での成立を目指し、精力的に努力しています。
日本の金融再生に道筋をつける
このようにして新しい政治システムは動きはじめています。
いうまでもなく、将来の日本経済の健全な発展への道筋を示すことは、私たち政治家に現在求められる最大の責務です。とくに金融は、経済のいわば動脈をなす部分であるため、短期間のうちに必要かつ大胆な政策を打ち出さなければなりません。
そもそも私たちの国は、1200兆円にのぼる個人金融資産を有し、世界一の債権国です。そして、製造業において証明されているように、技術力も非常に高く、経営者や従業員の力も欧米諸国にけっして引けをとりません。こうした実状をみれば、日本は産業・経済がより一層発展する土壌としては世界的に見てもきわめて恵まれた状況にあることがわかります。
ところが長期間にわたる護送船団行政によって、私たちの国の金融機関は進取の気鋭を失なってしまいました。その結果、自己責任で果敢にリスクをとり経営展開していくという企業家精神が失われ、その対極的な横並び意識が経営者間に蔓延してしまいました。
それで、個性のない金融機関が非効率かつ大量に発生してしまったわけです。私たちは、この水膨れして機能不全に陥った金融機関を体質改善し、筋肉質に変えて、その内部から変化を生み出しうる活力を取り戻さねばなりません。
要は、市場原理を活用しつつ金融再編・再生を進めていくことです。そのためには、金融システムを再生させる緊急治療も不可欠となります。たとえば、必要な不良債権の公的な購入や資本充実などの面では、公的介入を躊躇している時期や場合ではないことも事実です。日本の金融再生の道筋をつけるためには、積極的な政策的イニシアチブがどうしても必要であり、危機管理的な対応として果断に実行する決意が必要です。
不良債権処理で大きく前進
日本の経済を立て直し、再活性化させるためには、金融機関の抱える不良債権の処理は喫緊の課題となっていたのです。つまり、不良債権問題の実質処理を進め、金融機関に塩漬けになっている担保不動産を開放し、土地の有効利用、都市の再生へとつなげる施策がどうしても必要となってきました。
そこで、21世紀に向けての都市再構築を視野に入れた総合戦略として「土地・債権流動化トータルプラン」を策定しました。そして、「金融再生トータルプラン」を策定し、政治主導で実質的には議員立法ともいうべき金融安定化2法など、議員立法四法を含む「金融再生関連6法」を提案し、これらを実現したのです。
不良債権処理という一つの目標の達成のために、多くの政策群を戦略的な体系でごく短期間で作成し示した点は、今までの日本の政治では見られなかったことです。その結果、このトータルプランにクリントン米大統領やグリーンスパンFRB議長などの米国の金融関係者が強い関心を示すこととなりました。
いずれにせよこれからは、市場原理が働き、生き残りをかけた金融機関自身の真剣な努力の中から、おのずから効率化や再編も進むことでしょう。しかし留意すべき点は、昨今のヘッジファンド・風説の流布に代表されるように、市場も方向を間違うこともあり、暴力的になることもあるということです。
ですから、市場の合理性を大切にしつつも、それに対する政府や政治の防衛手段はきわめて重要になります。とくに金融信用秩序は、金融システムに対する国民の信頼感によって支えられており、一旦崩れると脆く、回復に大変なコストを要します。メガバンクについて受身的な対応にならぬよう、その危機管理はとくに重要視すべきだと私は考えています。
資産の流動化で経済再生のスタートを
私はかねてより、「日本経済の再生のためには、低金利や株価低迷などによって行き場を失っている1200兆円の大きな国民資産を、いかにして国内の経済活動によびこみ、勢いのある血流とするかがポイントになる」と主張し、その施策を検討してきました。
景気の底打ち感が出てきたとはいえ、長びく日本経済の低迷は、不動産高騰に端を発するバブル経済の崩壊によるものですから、そこからの脱出のためには、不動産市場に効果のある対策を打たなければならないと考えています。不動産市場の活性化は、土地や建物の取引きを増やすことに止まらず、街づくりのためのさまざまな建設需要やそこで暮らす私たちの消費活動を喚起することにもなります。生活空間倍増や21世紀にむけた魅力ある街づくり、活力ある国土づくりにもつながっていくでしょう。
先般、党の臨時経済再生・産業競争力検討チームで取りまとめ、6月11日に閣議決定された「緊急雇用対策及び産業競争力強化対策について」に大きな一項目として盛りこまれた「資産流動化の施策」は、銀行を介する間接金融から小口証券や債券による直接金融へと、事業者の資金調達手段が大きく変革しつつある欧米などでは広く採用されています。日本においても、収益性の高い優良な不動産を小口の証券として、株式や社債と同じくらい魅力ある投資対象とするよう規制を緩和するとともに、税制面での不利な扱いを見直そうとするものです。
この施策は、私たちの資産運用の選択肢をひろげ、また経済再生の起爆剤になるものとして、日本国内はもとより海外からも大きく注目されています。多額の借金をして、「カンフル剤」を打つようにあらゆる対策を尽くしている政府の景気対策の効果があるうちに、バブル後遺症の最大の要因である資産デフレの圧力を解消する手だてを用意することが、極めて重要であると思います。
豊かな都市や住宅にむけて「定期借家権」の創設を
また、これからの時代のライフスタイルに合わせた住宅対策や、前述した不動産の証券化の大前提として、不動産の収益やその将来予測を可能とする「定期借家制度」の創設をはかろうと取り組んでいます。これもまた、元気のでる日本経済と豊かな国民生活を作るために不可欠の施策です。
今後は、正当事由制度自体の見直しをはじめ、不動産税制の抜本的見直し、不動産の情報開示制度の確立、さらにはノン・リコース・ローンやプロジェクト・ファイナンスの導入など資金調達スキームの条件整備の構築などへ更に一層の努力が必要となるでしょう。
日本の一層の発展のためには、このような戦略的ビジョンや総合的プランを政治主導で構築し、しかも政府が必ずこれを実現するという決意と姿勢を示すことが重要です。私はそのために、今後とも全力を挙げて取り組んでいきたいと思っています。
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