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| │ 議員立法│ 憲法問題│ 企業法制│ 定期借家権│ 司法改革│ 教育改革│ 金融&土地債券流動化│ |
| ストックオプション制度等に係わる商法改正の経緯と意義 |
| <CONTENTS>
1.はじめに 1.はじめに 本稿は、自民党法務部会商法に関する小委員会委員、与党プロジェクト・チーム座長として、先に成立した2つの法律の原案を作成し、衆参両院の審議において提出者として説明・答弁を行った者として、議員立法による商法等改正の意義を広く世に問うとともに、立法者の意思を改めて明らかにし、今後の法律解釈・実務の指針としていただくことを目的としている。 本稿は以下の各部から構成されている。@議員立法として今回の商法等の改正の提案を行うに至った経緯、A法案作成・検討プロセス、B法律の概要、C国会質疑で問題となった点、D今後の課題、E議員立法による商法改正と立法者の姿勢について。
2.議員立法として今回の商法等の改正の提案を行うに至った経緯 今回の商法等改正は、ストック・オプション制度の導入および利益による自己株式消却の手続簡素化を内容とするものである。 このうちストック・オプションについては、かねてより経済界を中心に、その導入を求める声が強かったものであるが(たとえば、経団連の昭和52年意見書「株式制度改正試案に関する意見」、平成5年の法務省の「自己株式の取得及び保有規制に関する問題点に関する各界意見分析」)、最近になりベンチャー企業を対象に特定新規事業法に基づいて新株有利発行方式のストック・オプション制度が導入され、またワラント付社債等を使った疑似ストック・オプションが広範に実施されるに至り、一般的にその導入を認めるべきであるという要請がますます強くなっていた。 こうした現状を受けて、政府においても、本年 3月28日に閣議決定された規制緩和推進計画において、「特定新規事業に関する新株有利発行制度の運用実態調査を行い、調査結果を踏まえて、ストック・オプション制度の在り方等について検討に着手し、9年度中に結論を得て、法改正を経て10年度中の早期に導入する」とされていたところである。 また、利益による自己株式消却については、平成6年の商法改正において、株主総会決議に基づいて自己株式を取得・消却することが認められたが、この改正では、その都度株主総会決議を経るという厳格な要件を課していたため、みなし配当課税が凍結された後においても、発表企業は23社にとどまっていた(自己株式消却を発表した企業のうち1社は株主総会への付議を見送っている)。 今回の議員立法について、「従来商法のような基本法の改正は、法制審議会の議論を経た上で政府提出案として国会に提出され成立してきた。なぜ、議員立法で行う必要があったのか」、「特にストック・オプションの導入については政府も平成10年度から導入する予定であり、なぜ、1年前倒しする必要があったのか」との疑問があったことも事実である。 しかし、世界は、自由主義、民主主義という価値観に覆われたものとなりつつあり、その中にわが国が船出していく時期を迎えている。そのための準備としてわが国は構造改革を必要としており、官僚システム等の既存のシステムがうまく機能しない場合には、特に政治が構造改革に向けたリーダーシップを取っていくことが求められている。橋本政権が掲げる6大改革は、まさにそうした時代の要請に対する答えといえる。 証券市場においては、改正外為法の施行、金融のビックバンを控え、そのための環境整備が検討されている。迅速に証券市場の整備を行い、グローバル・スタンダードに近付けていく必要がある。また、ストック・オプション制度は、米国において、自動車産業等の基幹産業が競争力を失いつつある時期に、情報通信産業の勃興を支える制度的な背景となったとの事実があり、構造改革が求められるわが国の経済に必要とされている制度であることは広く知られている。 このような状況を踏まえ、従来の概念法学的な商法解釈・立法にこだわらず、諸外国の潮流を見ながら弾力的に商法改正を行っていく必要があると政治判断するに至ったものである。今後とも、必要があれば、積極的に議員立法を検討し、迅速・的確な改正を行い、求められる改革を推進することも考えられる。今回、「商法」という基本法の改正を議員立法で適切に行ったことにより、関係者の期待や反響がきわめて大きかったと実感している次第である。
(1) 自民党内部での検討 今回の商法等の改正は、平成6年の自己株式取得規制の緩和以来、自民党内で検討が始まっていたが、本格的な自民党内での検討は、2月6日の自民党法務部会商法に関する小委員会の開催が最初である。ストック・オプション制度の導入、利益による自己株式取得・消却規制の緩和へ向けて、かねてからの経済界からの強い要望を受け、自民党は、まず法務省より、平成6年の商法改正の経緯につき、ヒアリングを行い、2月13日には、経団連から、ストック・オプション導入、利益による自己株式取得・消却の手続緩和に関する要望について再度ヒアリングを行った。 その後、私は、山崎政調会長から、「今国会で、議員立法をするように」と強い要請を受け、法律案(試案)を作成することとなり、2月の後半から、3月の終わりにかけて、法務省、大蔵省の所管官庁、通産省、郵政省の関係省庁および中小企業、大企業の実務家と広く意見交換しつつ、法律案骨子(試案)を作成した。自民党商法小委員会(小委員長:太田誠一衆議院議員)では、3月24日、マスコミ関係者、法曹関係者からヒアリングを行った後、3月27日・28日の両日、前述の試案を下に審議を行い、この骨子を同小委員会の親部会である自民党法務部会に報告することとなった。これを受け4月1日に自民党法務部会が開催され、経団連、ニュービジネス協議会からヒアリングをするとともに、審議を行い、さらに、政調会長の下に、金融問題調査会長(越智通雄)、財政部会長(坂井隆憲)、商工部会長(中山成彬)、通信部会長(古屋圭司)など、関係部会長等で協議した結果、小委員会で了承された骨子をたたき台に、与党政策調整会議に諮ることを決定した。3月27日には、山崎政調会長は、太田誠一小委員長と私とともに、橋本総理を官邸に訪ね、意見を交換し、法務・大蔵両省の大臣に対する議員立法による商法の改正の協力を求めた。 (2) 与党内での検討 自民党法務部会の決定を受けた4月3日の与党政策調整会議では、自民党、社民党、さきがけの与党3党で、商法改正に関するプロジェクト・チームを設置することが合意された。 翌4月4日には、橋本総理から、法務・大蔵両大臣に対し、「党と十分に力を合わせ、今国会での商法改正の実現をめざし、しっかりとした内容のものにしてほしい」旨の指示があり、両大臣ともこれを快く受け入れた。 与党プロジェクト・チームでは、私が座長に就任し、自民党、社民党、さきがけがそれぞれ代表者を出し、4月11日に第1回会合を開催して以来、計4回の会合を開催し、4月21日に自民党案に若干の修正を加えたプロジェクト・チーム案を採択した。このプロジェクト・チーム案をもとに法案を作成し、与党各党は、各党内で最終的な手続を行うこととした。 (3) 野党への呼びかけ・国会の審議 与党3党の党内手続を終えた後、与党では、国会審議の迅速化を図るため、野党各党に国会への共同提案の働きかけを行い、結果的に新進、民主、太陽の賛同を得ることができた。法案は 4月30日、自民、社民、さきがけ、新進、民主、太陽の6党共同案として、衆議院に提出された。法案は、5月7日に衆議院法務委員会で可決され、8日には衆議院本会議で可決、参議院に送付された。参議院では、5 月13日に法務委員会で趣旨説明、15日には法務委員会を開催し、東京大学法学部の江頭憲治郎教授と、一橋大学商学部の伊藤邦雄教授から、参考人として意見を伺い、審議の上、可決、16日に参議院本会議で可決・成立した次第である。
(1) ストック・オプション制度の概要と意義 ストック・オプション制度は、会社が取締役・従業員に対して、予め定められた価格で将来において自社の株式を購入することができる権利を付与するものである。これにより、会社の業績向上による株価の上昇が、取締役・従業員の利益に結びつくことから、取締役・従業員の業績向上へのインセンティブとして機能することが期待される。また、株式の利益と取締役・従業員の利益を一致させることにより、株主重視の経営が一層定着するのに資すると考えられる。さらに、今回の改正では、自己株式を市場から調達してストック・オプションの対象とする自己株式方式のストック・オプションに加え、資金調達を要しない新株引受権を活用する方式のストック・オプションが認められたことから(後述)、資金力のないベンチャー企業の人材の確保などにも資することが期待される。 今回の商法の一部を改正する法律によって認められたストック・オプションは、自己株式を活用する自己株式方式と新株引受権を利用する新株引受権方式の2つであり、それぞれの概要は以下のとおりである。 @自己株式方式 [譲渡の対象]取締役または使用人。 [手続]株式を譲渡する取締役または使用人の氏名、その者に譲渡する株式の種類・数、譲渡価額、権利行使期間、権利行使についての条件(たとえば、取締役等が死亡した場合にもその相続人がオプションを行使することが可能かどうか、取締役等がその地位を失った場合にもオプションを行使することが可能かどうか)、譲渡するために取得する株式の種類、総数、取得総額について、株主総会決議を得る。なお、この決議の法的性質は、取締役会への授権である。 [数量制限]取得することができる自己株式の総数は、発行済株式総数の10%以内。 [財源規制]配当可能利益の範囲内。 [自己株式の取得方法]市場買付けに加え、公開買付けの方法によっても取得することができる。 [自己株式の取得期間]決議後最初の決算期に関する定時株主総会終結の時まで。 [権利行使期間]取締役または使用人が株式を購入することができる期間は10年以内。 [権利付与の期間]決議後最初の決算期に関する定時株主総会終結の時まで。 [権利が行使されなかった場合の自己株式の処分]権利行使がなされず、取締役または使用人に譲渡されなかった自己株式は、相当の期間内に処分しなければならない。 A 新株引受権方式 [譲渡の対象]取締役または使用人。 [手続]定款に定めがあり、新株引受権を付与する取締役または使用人の氏名、その者に与える新株引受権の目的である株式の額面無額面の別、種類、数、および発行価額、新株引受権を行使できる期間、新株引受権の行使についての条件について、株主総会の特別決議を得る。 [数量制限]発行済株式総数の10%以内。 [新株引受権の行使期間]10年以内。 [新株引受権付与の期間]株主総会の特別決議から1年以内。 [譲渡についての制限]新株引受権は譲渡することができない。 [公示]新株引受権は登記しなければならない。なお、自己株式方式、新株引受権方式の両方を同時に利用することはできない。 (2) 利益による自己株式消却の手続の緩和 自己株式の消却は株主資本利益率(ROE)の改善による投資対象として株式の魅力向上、株式市場の需給の改善(タイト化)、株式持合い解消の受け皿となること等の効果により、資本市場の効率化と活性化に大きな効果が見込まれる。また、余剰資金のある成熟産業から資金に需要旺盛な新規産業への資金の流入を円滑化するといった経済構造改革への効果も期待される。 しかし、従来の商法では、利益処分が株主総会の権限であることから、自己株式消却は定時株主総会の決議により行うことが必要とされている。そのため、年度途中に、経済情勢の変化等に応じて機動的・弾力的に自己株式の取得を実施する必要が生じた場合には、自己株式消却をすることができなかった。そこで、現行の商法の枠組みに加え、一定の要件の下で取締役会決議に基づいて自己株式取得・消却を行うことができることとした。 一定の要件とは以下のとおりである。 [対象]公開会社(上場会社、店頭登録会社)に限る。 [手続]定款で取締役会決議で自己株式の利益消却を行うことができる旨を記載し(定款変更のためには、株主総会の特別決議が必要)、取締役会では、取得する自己株式の種類、数、取得総額を決議する。 [授権できる範囲]発行済株式総数の10分の1以内(株数を定款に記載)。 [財源規制]中間配当財源から実際に中間配当した金額を控除した額の2分の1。 [自己株式取得の期限]取締役会決議後最初の決算期に関する定時株主総会終結の時まで。 [自己株式の取得方法]公開買付けまたは市場買付け。 [取得した自己株式の処分] 遅滞なく失効の手続きをする。 [報告] 取得した自己株式の種類、総数、取得総額、取得理由、失効の手続をした旨を定時総会に報告する。
今回成立した「商法の一部を改正する法律」および「株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律」によるストック・オプションおよび自己株式消却の制度の概要は以上のとおりであるが、以下では国会質疑の中で問題となった点、あるいは、実務上問題となるであろう点について述べたい。 (1) ストック・オプション制度に係る株主総会決議事項 改正商法では、ストック・オプションを付与するに当たって、株主総会で決議すべき事項として、「取締役又は使用人の氏名」、株式の「数及び譲渡の価額」を挙げている。 この点について、どの程度具体的な株主総会決議が必要なのかとの質問が国会においてなされた。 そもそも、改正商法210ノ2第2項および280条ノ19第2項の立法趣旨は、株主に対し、会社がどのようなストック・オプション・プランを実施するかを示させることにある。この観点から、たとえば小さな企業の場合は、取締役等の氏名を明確にした方が、ストック・オプション・プラン全体を明確にすることになると考えられるが、大きな企業の場合には多数の氏名が羅列されているだけではかえってストック・オプション・プランの全体がわかりにくくなることも考えられるし、事務的な負担も相当大きくなる。したがって、このような場合は、法律上、取締役または使用人の氏名を例示し、たとえば部署、役職および合計人数等ストック・オプション・プランの趣旨・内容を明らかにする要素を示せば、それでも足りる。 さらに、これに関連して、将来採用する取締役等、あるいは昇進等で将来ストック・オプション付与の対象となる使用人等に対し、ストック・オプションを付与できるかどうかも質問として取り上げられたが、これについても同様の趣旨から、認められると考えられる。ただし、同じく国会質問に挙げられた関係会社の取締役等へのストック・オプションの付与は、資本関係があるとはいえ、あくまで別法人であることから認められない。しかし、その必要があれば、ストック・オプションを実施する会社の取締役・使用人の身分を兼任することで工夫は可能と思われる。 さらに、「株式の数」については、個々の取締役等に譲渡する具体的な数を定めることが原則であるが、株主総会決議が取締役会への授権であることに鑑み、譲渡する株式全体の数の上限を定めるとともに、個々の取締役等に譲渡する株式数の上限および下限を定めるのであればそのような決議も認められる。 なお、譲渡価額については、株主総会時点で定額を定めるのではなく、価格を定める客観的な基準(たとえば、権利付与日の属する月の前月の平均値またはその平均値に一定の金額を加えた額)でも認められる。 (2) 相続 権利行使の条件に関連して、新株引受権方式のストック・オプションは譲渡できないとされている。この点について相続が可能かとの質問がなされた。新規事業法では、相続がなされた場合は、その相続人がオプション対象であるとみなされるとの明文規定があり、その対比で上記のような質問が出されたものと考えている。改正商法は、相続について何ら規定しておらず、したがって、相続できるか、相続できないかは、株主総会の決議により、ストック・オプション契約に委ねることもできる。ただし、生前贈与は、権利者の意思に基づく譲渡であり、譲渡が認められていない趣旨から、生前贈与は認められない。 (3) 新株引受権方式のストック・オプションに関する 「正当な理由」 改正商法第280条ノ19には、正当な理由があるときに、新株引受権方式のストック・オプションを付与できるとしている。この「正当な理由」を定款に記載するべきかどうかについても、質問があった。 この点、正当な理由があるときに該当するかどうかは、個別具体的な事情を株主総会が判断すべきものであり、正当な理由そのものを定款に記載する必要はない。 (4) 取締役・使用人に譲渡されなかった自己株式の取扱い 国会審議においては、毎年ストック・オプションを実施するような場合で、前年の総会決議に基づいて自己株式を取得し未だ取締役・使用人にストック・オプションが付与されていない場合の取扱いについて、その自己株式を本年の権利付与の対象として流用することが可能かどうかとの質問がなされた。自己株式の取得は株主総会決議に基づいて一定の目的にそって行われるものであり、その目的がなくなってしまった自己株式は、相当の時期に処分しなければならないのが原則である。しかし、株主の意思に従って、当該株式を流用することが株主総会で決議されるなら、あえて処分する必要はない。 (5) 利益消却に関わる定款変更について また、国会では、取締役会決議に基づく利益消却について、定款に定めた10%をすべて消却しないうちに、定款変更を再度行うことが可能かとの質問もなされた。 この点については、定款に定められた取締役会決議に基づく自己株式取得の趣旨に鑑み、当然、定款変更は認められる。 (6) 労働基準法との関係 また、労働基準法24条に賃金の通貨払いが定められていることから、「ストック・オプションが労働基準法24条にいう賃金に当たるか否か」も問題となった。 この点、労働省は、ストック・オプションを付与された者が利益を得る時期および額については、その者の判断に委ねられており、労働の対価とはいえず、したがって労働基準法上の賃金に当たらないとの見解を国会の答弁の中で示している。 (7) 証取法164条との関係 また、証取法164条に、上場会社等の役員が自己の計算において特定有価証券を買い付け6ヶ月以内に売却した場合(短期売買)において、会社がその利益を返還することを請求できるとの規定があることから、ストック・オプションの行使・株式取得およびその売却がこの規定の短期売買に当たるかどうかについても質問があった。 この点について大蔵省は、ストック・オプションが株主の承諾に基づいて行われる制度であることに鑑み、この規定の適用は除外される(省令により手当する)としている。 (8) 利益消却に関する「経済情勢、当該会社の業務又は財産の状況その他の事情を勘案して特に必要があると認めるとき」について 国会審議において、「経済情勢、当該会社の業務又は財産の状況その他の事情を勘案して特に必要があると認めるとき」とはどのような場合かとの質問も提起された。 この文言は、年度途中に、定時株主総会時には予想できないような(金利、為替、株価等の変動 等)経済情勢の変化や会社の業績等の変化が起こって、消却の必要性が生じた場合を想定している。この文言を置いた理由は、この制度が、本来定時株主総会に利益処分権があることを念頭に置きながら、一方では、一定の範囲内で取締役会が機動的・弾力的に自己株式の取得・消却を行う制度である趣旨を明らかにすることにあり、自己株式の取得・消却の必要な理由について、特別に、総会に承認を求めるものではない。
国会の審議の模様は上記のとおりであるが、これに加え、税制上の手当てについても議論となった。結果的には衆議院でも参議院でも、ストック・オプションについて、税制上の手当てがなされるべきことが、附帯決議されている。 今回の商法改正が円滑に活用されていくためには、税の問題は重要である。この点、ストック・オプションに関しては、現行の新規事業法の枠組みを参考にしつつ、税制を整備していくことが適当であると考える。 また、利益消却に関しても、平成11年まで凍結されているみなし配当課税について、制度が定着するまでその凍結を相当期間さらに延長することが、求められる。
7.議員立法による商法改正と立法者の姿勢について(『商事法務』97年6月5日号より抜粋) 今回の商法等の改正に当たっては、従来の行政上の慣行に則らず、議員立法という形式をとったため、商法学者を中心に、議論の進め方が不透明との意見があった。しかし、われわれ国会議員は立法府を構成する者として、すべての立法について責任を担っており、必要であれば、立法を行うことは当然であると考えている。このことは決して、商法学者の方々や法制審議会を軽視するということや開かれた審議をしないということではない。しかし、既存のシステムの予想を上回る時代の要請がある場合には、今後も積極的に政治がリーダーシップをとっていく必要があると考えている。 民事訴訟法の大家で、法制審議会にも長くかかわられた、元法務大臣の三ケ月章先生は、以下のような言葉を記しておられる。 「所詮どの様な古い法律制度にも悪い面と並んで良い面がひそんでいるものであるし、どんな新しい法律制度にも、良い面の裏側に悪い面があることは免れないのであって、それが法というもののもつ宿命である。法のこうした本質を直視すれば、過去の法制度のマイナスにくらべて、新しく構想する法制度のプラスの方が少しでも多い時は、過去への執着を克服して果敢に新しい法制の導入を意欲するのに臆病であってはなるまいというのが、半世紀に近い私の立法生活の一つの総括なのである」(三ケ月章「『朝令暮改』非か、『不磨の大典』是か」(学士会会報 817号より)。 立法に携わる学者の方々も、われわれ国会議員も、肝に銘じておくべき言葉であると思う。 |