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平成17年2月24日
自由民主党 保岡 興治
(はじめに−憲法調査会の5年間をふりかえって)
発足以来5年を経た衆議院憲法調査会も、いよいよ議長への報告書づくりが最終段階を迎えました。私は、法務大臣であった一時期を除き、この間一貫して本調査会の幹事を務めさせていただきました。いま、全体を通しての締めくくりの発言を行うに当たり、まずもって、この5年間、一貫して会長の重責を担われ、終始公正円満なる運営に努めてこられた中山会長に心から敬意を表したいと存じます。また、歴代の会長代理、幹事や委員各位に対しましても、そのご労苦に深甚なる謝意を表したいと思います。
新しい国の在り方を論じ、それを憲法に反映させることは、実は政治にしかできないことであります。
私は、この歴史の大転換期にあたり、国の最高法規である憲法を見直すのは、時代の政治家の歴史的使命であると確信する者でありますが、衆議院を構成する各会派が、意見の違いはあるものの、本調査会において5年間、21世紀の日本のあるべき姿を考えながら国の基本について議論を続けてきたことは非常に大きい価値を持つものと考えております。その意味で、護憲の立場から議論に参加いただきました委員を含め、すべての委員の方々のご努力に重ねて心から敬意を表したいと思います。
わが党は、立党の志を踏まえ、この秋の結党50周年記念にあたり憲法改正草案を発表することになっています。現在小泉総裁を本部長、森元総理を起草委員長とする新憲法制定推進本部において、その草案作成に全力で取り組んでいるところであります。
本日は、本調査会や党内のこれまでの議論を念頭において、私なりに、新しい時代の日本のあり方と憲法の基本について述べてみたいと存じます。
(日本国憲法に対する評価と未来への展望)
まず、第一に、新しい憲法において、歴史のすばらしい贈り物として与えられた「国民主権、基本的人権の尊重及び平和主義」を普遍的原理として大切にすることです。これを維持・発展させ、さらにわが国が民族として、人の和を大切にし、美しい国土と自然の調和の中に豊かな精神文化を築いてきた長い歴史や伝統、すなわち「国柄」を大切にして、日本の香りのある憲法にすることは、国民の共通の願いであると思います。この新しい国の基本を次の世代に受け継ぐとともに、日本が、全世界の人々の命を慈しみ、幸せを願う積極的な平和への貢献を果たす平和愛好国家であり、かつ世界や日本の伝統・文化を大切にする国であることを宣言すべきであると思います。
第二に、現憲法は、「個の確立」のため、個人の尊厳や人格の自由な発展を大切にし、国家権力が、これを侵さないという近代憲法の原理を強く持つものであります。しかし、すでに本調査会で述べてきたとおり、このような普遍的な原理を更に一層、発展させるためにも、人間の本質である「社会性」が、自立し、共生する個人の幸せを支える大切な「器」であることを明確にするとともに、かかる観点から「公共の価値」を再定義し、「個の確立」を大切にしつつ、国家と地域社会、家庭、個人の関係の正しいあり方を求めるべきであると思います。すなわち、新しい憲法は、国家と国民を対峙させた、単なる権力制限規範というにとどまらず、「国民の幸せひいては国益を守り、増進させるために、公私の役割分担を定め、透明性のあるルールの束」の形をとる、個人の尊厳を最高価値とする新たな価値体系を持つものと考えます。したがって、このような観点から、国民の憲法尊重義務や国防の責務など基本的な国民の責務も明確になると思います。
以下、時間の制約もありますから、特に重要と考えるいくつかの具体的項目について、その要点のみ取り上げて、意見を述べることといたします。
(象徴天皇制の再構成)
まず天皇制についてですが、私は、天皇の「象徴としての実質的な存在意義」、すなわち天皇は、代々、「わが国の平和と繁栄及び国民の幸せを願う存在」であることを明確にし、現在及び将来の国民が、日本の伝統の中心にある天皇制が長い歴史の中で国の安定に大きな役割を果たし、世界に比類なき貴重な存在であることを確認することが大切だと思います。その上で、天皇が、現憲法にあるとおり国政に対する一切の権能を持たないものであることを明確にし、天皇を「象徴的元首」と定め、「象徴としての行為」や「皇室行為」を公的行為として認め、内閣の助言と承認の下に置くべきではないかと考えます。尚、女帝については皇室典範で認めるべきだと考えております。
(未来志向の積極的平和主義)
次に、平和主義についてであります。私は、「再び侵略戦争をしない」という日本国憲法における国民の誓いをさらに深化させて、九条一項を堅持するとともに、自衛隊を軍とし、戦力を保持することを認め、総理大臣の最高指揮権によるシビリアンコントロールの原則を明らかにし、自衛と国際貢献における武力行使のルールを安全保障基本法とセットで誰が見ても明確に分かるようなものにすべきだと思います。その際、平和愛好国としての「国柄」を強く認識するわが国としては、武力行使については具体的な場合を十分に論議した上、できるだけ抑制的な対応をすることが適当であると思います。
(国の統治機構の改革)
次に国の統治機構に関して申し上げます。今まで述べてきたように、時代が急激に変化する現在、迅速的確な政策決定とその実行は、日本の将来にとって決定的に重要であり、総理大臣の強力なリーダーシップや二院制の的確な見直しは国民が強く望んでいるところであります。また、内閣法制局の解釈改憲の慣行を改め、国会や最高裁の憲法判断がもっと活性化する制度を考えたり、憲法改正条項を緩和し、国会が国民に積極的に憲法のあり方を問うことが可能な改正が求められていると思います。
また、地方自治に関しては、国と地方の役割を明確にするとともに、「補完性の原則」や地方の自主性を尊重する「基本条例」や「課税自主権」など保障し、住民の身近なところで自らのことが決められるよう、その基本を明らかにすべきだと思います。
(早期の憲法改正に向けて)
以上、主要な憲法改正事項の基本について申し述べましたが、最後に、前回の当調査会において、民主党の憲法調査会長を務めておられる枝野会長代理から、「現在法律が制定されていない憲法改正手続きにつき、真摯な議論の上、幅広い国会の意思で早期に制定することが望ましい。他の政党にその意思があれば、協議の用意がある」旨のご発言がありました。私はこれを心から歓迎いたします。わが党と公明党はすでに憲法改正手続きについて一定の合意を得ており、民主党との協議に入る用意は整っていると思います。中山会長のご指導をいただきながら一日も早く協議が開かれるよう強く希望いたします。
さらに、枝野氏は「政権を担う意思のある政党は、どちらが政権についても、今後国政運営の共通のルールを憲法で定める合意形成を進める必要がある。」という趣旨の憲法改正の政党間協議の必要性について言及されました。
わが国最初の聖徳太子の17条憲法の第1条に、「和を持って尊しとなす」との後に、「かみ和らぎ、しも睦びて、こと論(あげつろ)うに、かなうときは、すなわち事理(こと)おのずから通ず。何事か成ざらん」と書かれています。立場を異にしても、協調親睦の気持ちを持ち、論議すれば、自ずから道理にかない、どんなことでも成就するものだと説いている。政治をめぐる抗争の激しかった時代にあって、日本の国柄を見事に表すとともに、その後の日本の歴史と伝統に、和の文化を定着させた偉大な業績に思いをいたし、今こそ我々は、この伝統を大切に憲法改正の論議を進めなければならないと思います。
「坂之上の雲」を失った日本は、今、激動の時代にあって、法の支配に基づく民主政治の基本として憲法改正を強く求めています。後がないという思いを強く抱くものでありますが、本調査会における五年間の成果を国家国民の命運をかけ、憲法改正に結実させることを強く訴えて意見表明を終わります。
以 上
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