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「新時代にふさわしい憲法を」経団連機関誌「経済トレンド」(平成17年1月号) 


新憲法の理念
諸外国においては、時代の変化に適合するように憲法改正の努力が続けられている。しかし、我が国においては、戦後、憲法が一度も改正されず、内外の状況が大きく変化する中「国の基本」がもっぱら政府の憲法解釈の工夫に求め続けられてきた。我が国を取り巻く昨今の環境にかんがみれば、現憲法の限界が露わになってきており、今こそ、憲法制定権者たる国民とその代表機関たる国会が協働し、日本の新時代の幕開けにふさわしい憲法を創ることが必要である。
このような観点から、我が党は、一昨年の総選挙において、立党五十年を迎える本年11月までに新しい憲法草案をつくることを国民に約束した。現在、党憲法調査会の憲法改正案起草委員会を中心に、その具体的な草案を検討しているところである。
この新憲法草案においては、その究極的価値は「生命の尊重」にあると考える。和を尊び、命を慈しむ我が国古来の伝統に根差した「国柄」や、他者の生命・尊厳を尊重し、公正な社会の形成に貢献するという「公共」の考え方も、実はこの「生命の尊重」と同じ価値から発している。そもそも、近代立憲主義の基本的価値である「個人の尊厳」とこの「生命の尊重」は、いささかも矛盾するものではない。「己の幸せ」も大事だが、「他の幸せ」も大事という考え方こそ、重要なのである。
 また、国際貢献のルールづくりに関しても、実力行使の原理が、命を慈しむ我が国古来の伝統と、二度と繰り返してはならない悲惨な戦争の教訓にあることを踏まえ、積極的な対応をする分野と限定的な対応にとどめる分野を明確にしつつ、国際平和に能動的に貢献する姿勢を位置づけるべきである。
 さらに、この新憲法草案において第一に確認しておきたいことは、戦後我が国に定着した「国民主権主義」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」の三原則を高く評価し、さらに発展させることである。その上で、日本人のアイデンティティーを新憲法の中に見出せるものにする。さらに、21世紀の課題に的確に対応し、人間の本質である「社会性」が個人の尊厳を支える器であることを踏まえ、家族や共同体が「公共」の基本をなすものとして、重要な位置を占めなければならない。そして、これを前文に規定するに当たっては、その表現は、平易でわかりやすく、かつ、模範的な日本語とする必要がある。
 

各論について
まず、最大の論点である「安全保障」については、自衛のための戦力の保持を明記することについては、党内の合意は得られている。その上で、1.戦後日本の平和国家としての国際的信頼と実績を高く評価し、今後とも重視する、2.我が国の平和主義の原則が不変のものであり、決して侵略国家とならないことを明確にする、3.個別的・集団的自衛権の行使に関する明文の規定を置く、4.内閣総理大臣の最高指揮権及びシビリアンコントロールの原則に関する規定を置く、5.有事、大規模なテロ、大規模自然災害など非常事態全般に関する規定を置くことなどが検討されている。今後は、我が国の国力に見合った防衛力を保有し、平和への貢献を行う国家となるために、自衛権や国際貢献のルールを、どこまで新憲法草案に書き込むかが争点となろう。
 次に、「国民の権利及び義務」については、現憲法の定める基本的人権を土台としつつ、時代の変化に対応した新たな権利や義務を規定するとともに、国民の健全な常識に基づくものとする必要がある。例えば、いわゆる「新しい人権」については、環境権やプライバシー権、生命倫理に関する規定、犯罪被害者の権利に関する規定の新設などが検討されている。
 一方、「公共の責務」については、1.社会連帯・共助の観点からの公共的な責務、例えば、非常事態における国民の協力義務や社会保障制度を支える責務に関する規定の新設、そして、2.家族を扶助する義務に関する規定の新設などが検討されている。
 また、「国会及び内閣」については、内閣総理大臣のリーダーシップの明確化や政党条項の創設が検討され、さらに二院制については、両院の権限や選挙制度が似ている現状を改革することで同意が得られている。その上で、具体的な在り方について検討が進められている。
 「司法」については、憲法裁判所の設置や最高裁判所の改組などについて検討すべきであることや、裁判官の身分保障の見直し、裁判の迅速化を図るべきである点などが合意されている。
 「財政」については、財政民主主義をより実質の伴うものにする方向で見直している。
 「地方自治」については、いわゆる「道州制」を含めた新しい地方自治のあり方について、1.法律の範囲内での課税自主権の付与など自主財源の確保、2.自己決定権と自己責任の原則、3.補完性の原則などその基本的事項を明示すべきである。
 「憲法改正手続」については、現憲法の改正要件が厳格すぎるとの指摘があり、これを緩和する方向で検討が行われている。
最後に、昨年12月に与党間で「日本国憲法改正案国民投票法案」と、それを審査するための「国会法改正案」を本年の通常国会で審議することが決定しており、今後ますます、国民的憲法議論が盛り上がることを期待したい。