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憲法逸話 言論統制の声明
敗戦直後、日本にGHQが乗り込んできた際、マスコミに対し徹底した検閲・言論統制を行った。その声明文(ドナルド・フーバー大佐のマスコミ代表への声明)
「・・・・マッカーサー元帥は、連合国がいかなる意味においても、日本を対等と見なしていないことを明瞭に理解するよう欲している。日本はいまだに文明国のあいだに位置を占める権利を認められていない敗者である。諸君が国民に提供して来た色つきのニュースの調子は、あたかも最高司令官が日本政府と交渉しているような印象をあたえている。交渉というものは存在しない。国民は連合国との関係において日本政府の地位について、誤った観念を抱くことを許されるべきではない。
最高司令官は日本政府に命令する・・・・交渉するのではない。交渉は対等なものの同士のあいだで行われるのである。日本人は、すでに世界の尊敬を獲得し、最高司令の命令に関して、"交渉する"ことのできる地位を得たと信じるようなことがあってはならない。ニュースのかかる偏向は即刻停止されなければならない。諸君は国民に真実を伝えず、そのことによって公安を害している。諸君は日本の真の地位を不正確に描写している。諸君が公表した多くの報道は、真実に反していると知るべきである。今後日本国民に配布される記事は、一層厳重な検閲を受けることになる。新聞とラジオは引き続き100%検閲さえる。虚偽の報道や人心を誤らせる報道は許されない。連合国に対する破壊的批判も然りである。日本政府は直ちにこの方針を実施に移す手続きをとらねばならない。もし日本政府がやらなければ最高司令部が自らこれを行う。・・・・」
「閉ざされた言語空間」江藤淳・著より
憲法まめ知識@ 自由民主党綱領の憲法に関する記述
党の使命(昭和30年11月15日)
現行憲法の自主的改正を始めとする独立体制の整備を協力に実行して、もって、国民の負託に応えんとするものである。
党の政綱
平和主義、民主主義、及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う。
自由民主党新政策綱領(昭和60年11月15日)
わが党は、自主憲法の制定即ち憲法の自主的改正を、立党以来の党是としている。今後とも平和主義、民主主義、基本的人権の尊重を堅持しつつ、時代の変遷に即して現憲法の改正につき検討をすすめる。
自由民主党新宣言(平成7年3月5日)
国の指針となる憲法については、すでに定着している平和主義や基本的人権の尊重などの諸原則を踏まえて、21世紀に向けた新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、国民と共に議論を進めていきます。
憲法まめ知識A 山崎正和氏の司法取引論
劇作家・大学教授を務め、文明論や歴史的観察に定評のある山崎正和氏が、現在起きている東京裁判史観見直し論争に対し、日本政府がサンフランシスコ平和条約の受け入れと東京裁判の事実を司法取引したと考えるべきとし、次のように述べている。
「・・・『東京裁判』の描いた戦争の姿はまさに法的真実であって、戦後の日本はそれを政治的正義の立場から受け入れたのであった。世界の平和とより大きな秩序のために、より小さな真実の細部は不問付すことを認めたのである。たしかにあの裁判は法理的に不備のある裁判だったし、その進め方にも問題は多かったが、日本はそのことを含めて政治的に受け入れた。サンフランシスコ講和条約の条文のなかに、日本は『東京裁判』の判決を否定しないという制約を明記した。それを前提にして日本は新しい国内体制をつくり、旧敵国とさまざまな条約を結び、結果として平和で豊かな社会を楽しむことができた。思えば、戦争直後に獲得した天皇制の維持、占領軍による直接統治の回避、軍票の氾濫を防いだ日本通貨の維持などを手始めに、戦後日本の独立と回復は、いわばあの裁判での和解、ないしは司法取引の成果だったと見ることができるのである。・・・」
「歴史の真実と政治の正義」山崎正和・著より
憲法まめ知識B 読売新聞の憲法改正試案
読売新聞が一九九四年十一月三日に憲法改正試案を発表した。そのなかで、現憲法九条にあたる部分について次のように提案している。
第三章安全保障
第十条(戦争の否認・大量殺傷兵器の禁止)
- 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力の行使よる威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを認めない。
- 日本国民は、非人道的な無差別大量殺傷兵器が世界から廃絶されることを希求し、自らこのような兵器を製造及び保有せず、また、使用しない。
第十一条(自衛のための組織、文民統制、参加強制の否定)
@ 日本国は、自らの平和と独立を守り、その安全を保つため、自衛のための組織を持つことができる。
A 自衛のための組織の最高の指揮監督権は、内閣総理大臣に属する。
B 国民は、自衛のための組織に、参加を強制されない。
憲法まめ知識C ドイツの緊急事態規定
ドイツの緊急事態に関する憲法規定は世界でもっとも詳細かつ具体的であるとされている。ドイツ連邦共和国基本法(ドイツの憲法)の規定は次の通り。
一. 防衛上の緊急事態
「防衛上の緊急事態」(または「防衛事態」)として、「ドイツの領域が武力よって攻撃され、または武力による攻撃が目前に差し迫っている状態」がこれにあたる旨定義されている(ドイツ連邦共和国基本法10a).
二.防衛上の緊急事態の確定
@ 防衛上の緊急事態の確定は、連邦議会(下院)が連邦参議院(上院)の同意を得て行う。確定のプロセスとしては、連邦政府の申し立てに基づいて行われ、連邦議会議員の過半数で、投票数の三分の二が必要(基本法一一五条a第一項)
A 即時の行動が必要な場合、合同委員会(連邦議会議員二十二名、連邦参議院十一名より構成)が招集され、委員の過半数で、投票数の三分の二がこの事態を確定しうる(同条a第二項)
B 防衛上の緊急事態の公布は連邦大統領が行う(同条a第三項)
C イツ領域が武力によって攻撃され、直轄の連邦機関が即時に上記@による確定を行うことができない場合、「防衛上の緊急事態」は攻撃が開始された時点で確定されたものとみなされる(同条a第四項)」
三 邦首相の命令権
防衛上の緊急事態の公布とともに、国防軍に対する命令権及び司令権は、国防大臣から連邦首相に移行する(基本法第一一五条b)
四 連邦政府の非常権限
@ 防衛上の緊急事態においては、連邦政府は必要な限度において以下の措置をとりうる。
(1) 国内全域に連邦国境警備隊を出動させること。
(2) 連邦各州の政府及び州の官庁に対し、必要な指示を行うこと
A 上記の措置は遅延なく連邦議会、連邦参議院、合同委員会に報告される
(以上基本法第一一五条f)
五 防衛上の緊急事態の終了
連邦議会は、連邦参議院の同意を得て、いつでも防衛上の緊急事態の終了を宣言することができる。連邦参議院は、連邦議会に対しこの議決を要求することができる。(基本法第一一五条一)
憲法まめ知識D 各国の憲法改正規定
アメリカ
憲法修正第5条 連邦議会の両院の三分の二又は全州の三分の二の州議会が発議して、四分の三の州が承認(州議会又は特別に選挙された各州にの憲法会議による)が必要
ドイツ
第79条 連邦議会議員の三分の二及び連邦参議院の票決議の三分の二の同意が必要
フランス
16章:89条 両院の議決と人民投票による承認(大統領が人民投票に替えて両院合同委員会に付託することを決定した場合には、その五分の三による議決)が必要
憲法まめ知識E最近議論になっている主な憲法をめぐる論点
1:前文
○ 表現上の問題
・ 現行憲法の前文は、翻訳調、日本語としておかしな表現が多い。
○ 内容の問題
・ 現行憲法の前文は、独立国としての自主性に欠ける。
・ 日本の歴史・伝統・文化に言及すべきである。
2:天皇
・ 元首であると明記する。
・ 君主にして元首であると規定する。
・ 儀礼的な対外関係に関してのみ形式的に元首とする。
3:安全保障
○ 戦争の放棄
・ 戦力の保持を明記した上で、侵略戦争の禁止、徴兵制の禁止を規定する。
・ 世界平和の理念を1つの独立した条文に規定し、別の条文で自衛権を有すること及び自衛のための国防組織を持つことを規定する。
・ 9条1項では、侵略戦争のみを放棄する旨規定し、9条2項で自衛軍を明文化する。
・ 9条1項はそのままにして、2項で自衛隊の存在を明文化する。
・ 2項もそのままにして、3項で自衛のための組織を認める。
○ 国際協力
・ 国際平和維持活動に自衛のための組織を派遣できることを規定する。
4:国民の権利及び義務
○ 既存の規定明確化
・ 皇室伝統の儀式、国の戦没者慰霊等の行事が問題とならないような政教分
離規定を考える。
・ 教育権の主体を明確化する。
○ 新しい権利の追加
・ 知る権利
・ 人格権
・ 環境権
○ 権利の制限、義務の追加
・ 公共の福祉の規定を独立させる。自由や権利の保持のために国民の努力が必要であることを訓示する。
・ 土地の究極的所有権は、国家に属するものとする。
・ 自ら生きるとともに、他を生かしていくという面を重視した人権概念の再構築が必要である。
・ 国防の義務を追加する。
5:国会
・ @参議院に条約案件及び人事案件の先議権と議決の優越権を与える。A参議院に憲法裁判所長官の指名権を与える。B裁判官弾劾裁判所設置権(参議院)と追訴委員会の設置権(衆議院)の機能分離を明確化する。
・ 参議院議員の選挙について、間接選挙、任命議員制を採用する。
・ 参議院の任期を4年し、各県2名あるいは4名の代表を選出する仕組みにする。
6:内閣
・ 内閣総理大臣は、内閣を代表し、国務大臣を統率すると規定し、首相のリーダーシップを強化する。
・ 首相公選制を導入する。
7:司法
・ 行政機関の裁判を明確な形で規定する。
・ 憲法裁判所を設置する。
8:財政
・ 「公の支配に属さない慈善、教育若しくは博愛の事業」への公金支出の制限を削除する
9:地方自治
・ 地方分権を推進するために、地方自治の本旨を具体的に規定し、国と地方自治体の役割分担を明記する。
10:憲法改正手続き
・ 改正の条件を緩和する。{具体的には、各議員の在籍議員の3分の2以上の出席により、出席議員の過半数の賛成で議決後、国民投票にかける。}
11:その他
○ 政党
・ 政党に関する条項を導入する。
○ 国民投票制度
・ 国民投票制度を導入する。
○ 緊急権制度
・緊急事態における内閣への権限の集中と国民の権利の制限を規定する。
憲法まめ知識F 米国大統領の地位継承規定
内閣総理大臣の継承問題が話題となっているが、米国の憲法では大統領が辞職や死亡等でその職務の遂行が困難な場合の地位継承規定が詳細に規定されている。
第二十五修正(一九六七年成立)
第一節 大統領が免職され、死亡し、または辞職した場合には、副大統領が大統領となる。
第二節 副大統領の職が空席のときは、大統領は副大統領を指名し、この指名された者は、連邦議会の両院の過半数による承認を得て副大統領の職に就任する。
第三節 大統領が、その職務上の権限および義務の遂行が不可能である旨の宣明書を上院の仮議長および下院議長に送達するときは、大統領がこれと反対の趣旨の宣明書をそれらの者に送達するまでの間、副大統領が大統領代理として右の権限および義務を遂行する。
第四節 副大統領および行政各部の長の過半数、または連邦議会が法律によって定めるその他の機関の長の過半数が、大統領はその職務上の権限および義務の遂行が不可能である旨の宣明書を上院の仮議長および下院議長に送達するときは、副大統領が直ちに大統領代理として右の権限および義務を継承する。
その後において、大統領が右の不能は存在しない旨の宣明書を上院の仮議長および下院議長に送達するときは、大統領はその職務上の権限および義務を回復する。ただし、副大統領および行政各部の長の過半数、または連邦議会が法律によって定めるその他の機関の長の過半数が、四日以内に、大統領はその職務上の権限および義務の遂行が不可能である旨の宣明書を上院の仮議長および下院議長に送達するときはこの限りではない。この場合において、連邦議会は右の問題につき決定を下すものとし、開会中でないときは、四八時間以内にその目的のために会議を招集するものとする。連邦議会が後者の宣明書を受諾した後二一日以内に、または連邦議会が開会中でないときは会議の招集を要求された後二一日以内に、両院の三分の二投票によって、職務上の権限および義務の遂行が不可能である旨を決定するときは、副大統領は大統領代理として右の権限および義務を引き続き遂行する。その他の場合には、大統領はその職務上の権限および義務を回復する。
憲法まめ知識G 憲法改正の国際比較
諸外国の憲法改正の実際(一九四0年代までの憲法を中心に)
アメリカ 一九九二年までに十八回、二十七か条の追補
ノルウエー 一九九五年までに一三九回、二五六か条の改正
オーストラリア 一九八八年までに八回改正
イタリア 一九九三年までに六回改正
ドイツ 一九九八年までに四十六回改正
フランス 一九九九年一月現在十一回改正
「日本国憲法を考える」西修・著より
憲法まめ知識H 吉田首相の自衛戦争放棄答弁
日本国憲法法案が審議されていた第九十回帝国議会(一九四六年「昭和二十一年」六月二十八日:衆議院本会議)で有名な野坂参三・吉田首相論争において、吉田首相は野坂氏の「憲法には戦争一般ではなく、侵略戦争のみの放棄を書き込めばよいのではないか」という問いに対し、
「国家正当防衛権による戦争は正当なりとせらるるようであるが、わたしはかくの如きことを認めることが有害であると思うのであります。近年の戦争の多くは、国家防衛権の名において行われたることは顕著な事実であります。故に正当防衛権を認めることが戦争を誘発するのであります。ご意見の如きは有害無実の議論と私は考えます」
と答弁した。
研究者によると、吉田首相は日本が独立を回復した後に憲法を改正すればよく、占領軍が日本に駐留している間は、かれらが自衛戦争を日本の代わりに行うという考えであったようだ。
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