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商法の一部改正等
〜ストック・オプション及び機動的利益消却手続の導入〜
法学セミナー1998/2月号(No.518)掲載

衆議院議員(与党・商法改正等プロジェクトチーム座長)

保岡興治

 商法の一部を改正する法律(平成九年法律第五六号)及び株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律(平成九年法律第五五号)のあらまし

[経緯]第一四〇回国会において、ストック・オプション制度の導入及び自己株式の利益による消却手続の緩和を内容とする標記法案が、保岡興治衆議院議員ほか八名から提出され、同国会で可決・成立し、平成九年五月二一日に公布され、一部の規定を除き同年六月一日から施行された。

 

1 商法改正法の概要

 ストック・オプションとは、会社の取締役・使用人に対して付与される権利であって、将来においてあらかじめ定めた金額で当該会社の株式を買うことができるものをいう。今回の改正によって、「自己株式方式」と「新株引受権方式」の二つの方法によるストック・オプション制度が設けられた。

 自己株式方式とは、ストック・オプション付与契約に基づいて、会社が将来取締役・使用人に譲渡する株式(自己株式)をあらかじめ取得しておき、取締役・使用人からストック・オプションの行使があればそれに応じて当該株式会社を譲渡する方式である。この方式による場合、ストック・オプション付与についての重要事項(対象者、対象となる株式の種類や数、行使価格、行使期間、行使についての条件)について、定時株主総会の決議を要する。

 一方、新株引受権方式とは、会社が新株引受権を取締役・使用人に付与し、新株引受権の行使があればそれに応じて新株を発行する方式である。この方式による場合、まず、定款に「取締役・使用人に新株引受権を与えることができる」旨の規定がなければならない。その上で、ストック・オプション付与に関する重要事項について株主総会の特別決議を要する。なお、付与された新株引受権は、譲渡することができないものとされている。

 自己株式方式、新株引受権方式いずれの場合も、ストック・オプションの行使期間は総会決議から一〇年以内とされている。なお、自己株式方式、新株引受権方式の併用は、一方のストック・オプションに未行使部分が残存している限り他方の実施は認められない。

 

2 利益消却特例法の概要

 この法律は、公開会社(上場会社及び店頭登録会社)に限って、従来の商法の枠組みに加え、より機動的・弾力的な方法で株式の利益消却をする途を開いたものである。

 具体的な手続は以下のとおりである。

1)
公開会社は、定款に取締役会の決議により自己株式を買受けて消却することができる旨の定め及びその定めをした日後において取締役会の決議により買受けて消却できる自己株式の総数(発行済株式総数の一〇%が上限)を定めるものとする。

2)
定款に・の定めをした公開会社は、取締役会の決議により自己株式を買受けて消却できる。ただし、当該取締役会決議の効力はその決議後最初の決算期に関する定時総会の終結の時までであり、いくら決議で授権された範囲内であっても中間配当財源から実際に中間配当に使用した金額を控除した額の二分の一を超えて買い受けることはできない。

3)
自己株式を買い受けた公開会社は当該自己株式を遅滞なく失効させ、取締役はその旨を取締役会決議後最初の決算期に関する定時総会に報告しなければならない。

(議員立法研究会)


1 商法改正法について
 
 改正商法では、ストック・オプションを付与するに当たって、「取締役又は使用人の氏名」及び株式の「数及び譲渡の価額」を株主総会で決議すべき事項としていますが、どの程度の具体性が求められるのでしょうか。


保岡

今挙げられた規定の立法趣旨は、株主に対し、会社がどのようなストック・オプション・プランを実施するかを示させることにあります。この観点から、第一に、取締役等の氏名については、例えば小さな企業の場合には、取締役等の氏名を明確にした方が、ストック・オプション・プラン全体を明確にすることになると考えられますが、大きな企業の場合には多数の者の氏名が羅列されているだけではかえってストック・オプション・プラン全体をわかりにくくするし、事務的な負担も相当大きくなると思います。したがって、このような場合には、法律上、取締役又は使用人の氏名を例示し、例えば部署、役職及び合計人数等ストック・オプション・プランの趣旨・内容を明らかにする要素を示せば、それでも足りると思います。

 第二に、株式の数についても、個々の取締役等に譲渡する具体的な株式数を定めることが原則です。しかし、株主総会決議が取締役会への授権であることにかんがみ、譲渡する株式総数の上限を定めるとともに、個々の取締役等に譲渡する株式数の上限及び下限を定めるのであれば、そのような決議も認められます。

 第三に、譲渡価額についても、株主総会時点で一定額を定めるのではなく、たとえば権利付与日の属する月の前月までの平均値又はその平均値に一定の金額を加えた額というように、価格を定める客観的な基準を示すのであれば、そのような決議も認められます。

新株引受権方式のストック・オプションは、相続できるのでしょうか。


保岡

改正商法二八〇条ノ二〇は、新株引受権方式のストック・オプションは譲渡できないと規定しています。一方、新株有利発行方式によるストック・オプション制度を導入していた特定新規事業実施円滑化臨時措置法では、相続がなされた場合、その相続人がオプション対象であるとみなされるとの明文規定があり、その対比で、改正商法はどのような立場をとるのであろうかという趣旨のご質問だと思います。

 結論から言えば、改正商法は、相続について何ら規定しておらず、したがって、相続できるか、相続できないかは、株主総会の決議により、ストック・オプション契約に委ねることもできます。ただし、生前贈与は、権利者の意思に基づく譲渡であり、譲渡が認められていない趣旨から、生前贈与は認められません。

自己株式方式のストック・オプションについて、取締役等に譲渡されなかった自己株式については相当の時期に処分されなければならないとされているところ、その自己株式を別の自己株式取得決議に係るストック・オプションに流用してもよいでしょうか。


保岡

改正商法二一一条の考え方は、自己株式の取得は株主総会決議に基づいて一定の目的にそって行われるものであり、その目的がなくなってしまった自己株式は、相当の時期に処分しなければならないのが原則だというこということです。しかし、株主の意思に従って、当該株式を流用することが相当の時期以内の株主総会で決議されるなら、可能であると考えられます。

取締役等が退職した後も、権利行使期間内ならストック・オプションを行使できると考えてよいのですか。

保岡

ストック・オプション・プランの中で、権利行使期間も明確にされることとなっています。その期間中に取締役等が権利行使をしないまま退職をしてしまった場合、退職者に対しオプションを行使させるか、行使させないかは、権利行使の条件の問題といえますが、これについてもストック・オプション・プラン全体の見地から株主総会が判断すべきであると思います。

2 利益消却特例法について
 
利益消却特例法に関し、自己株式を買い受けて消却する旨の取締役会の判断の合理性はどう担保されますか。


保岡

今回の特例法により、株式の利益消却は取締役会の経営判断により、機動的弾力的に行えるようになりました。しかし、同時に特例法五条一項は「特に必要があると認めるとき」に限って株式の利益消却を認めることとしており、このような法の趣旨に反応するような消却がなされた場合には、当然取締役の責任が問われることになります。もちろん、株主から代表訴訟を提起される可能性もあります。
 

3 今後の立法活動
 
今後の立法活動についてお考えをお聞かせください。


保岡

新しい時代の変化に迅速に対応するためには、新しい政治のリーダーシップを示していかねばなりません。これからも定期借家権、コーポレートガバナンス、金融システム改革等新たな法的枠組みづくりに向け、議員立法を中心に積極的に取り組んでいきたいと思っています。